昔、三河地域は綿の生産がとても盛んでした。女たちは少女の頃から機織りを教わり、「機織りのできない者は嫁に行かれない!」と言われたほどでした。女たちは自分や家族の着物はほとんど織っていたのです。
機械化の発展と同時に手織りは、あっという間に消えていきました。
偶然知った「三河木綿」に私は夢中になりました。
綿の種をまき、収穫した綿から、糸を紡ぎ、身近な植物で染め、それを高機で織ります。気の遠くなるような長い作業です。
なぜ?と聞かれてもうまく説明できませんが、何でも簡単に手に入る時代に、時間と手間をかけて出来上がる木綿のなんとも言えない暖かさに触れたからかもしれません。
『三河木綿」は奥が深く、まだ入り口に、たどり着いたばかりですが、これからの、一生の仕事です。
綿で糸を紡ぐようになって初めて染めたものが、マリーゴールドでした。大切に保管しておいた糸をやっと使うことができました。何年か過ぎた糸は少しずつ色が落ち着きました。渋い、いい色になりました。
夏の太陽に負けない元気な木綿が織り上がりました。
三河木綿の暖かさは触れてみないと分かりません。
小布を送りますので実際に触って確かめて下さい。
新聞で「綿の種子差し上げます」
という小さな記事を見つけてからもう10年が過ぎました。
次の年の春、種をまき、秋には少しばかりの綿が取れました。
収穫した綿を目の前に、「これをどうしたら糸にできるのかしら?」と戸惑う日々でした。
これも又、新聞記事で見つけた三河木綿保存会の高木先生に電話をして、糸にする方法を教えていただきました。
古い糸車を購入し、糸紡ぎの楽しさも味わうことができました。
それから毎年、種を蒔いては綿を収穫して、糸を紡いできました。昨年からは、
念願だった機織りも始めることができ、
三河木綿の素晴らしさに感動の連続です。